台湾のIT担当大臣と日本のIT 大臣を紹介比較した内容のYouTubeが、たまたま台湾でバズり(38万回再生)、アチコチからインタビューを受けました。そのために見知らぬ台湾人からまで「日本は大丈夫か?」と言われてしまいます。

日本の報道を見ていると、米国やイタリアの感染者や死亡者の数と比較して、結果的に日本の対応はよかったね、と捉えている傾向のものが多いようですが、本当にそうでしょうか?「ウィルスの型が欧米とは違った」、「生活様式や体質が違う」などとあれやこれや取り上げて、よかった理由探しをしていますが・・・

しかし、アジアの中で比較したのなら、日本は決して優等生ではありません。人口1000万人当たりのコロナでの死亡者数は、日本は80人に対して、韓国は60人、マレーシアは40人です。それに対して、私が生活している台湾は3人。ちなみにタイが8人、香港9人です。マカオ、ベトナム、カンボジア、ラオスに至っては0人。しかもこれらの国は中国との関係はかなり深く、しかも隣接していたりもします。台湾や香港は人口密度も東京より高く、感染拡大の条件は揃っていると言えるのにです。これらのアジアの国の中では医療も衛生観念ももっとも日本は高いはずなのに。つまり、日本は、欧米と比較したのなら悪くはないですが、アジアの中では全然大したことはない、ということです。日本の皆さんにはこの現実をしっかり見つめてほしいと思います。私はなにも日本がダメダメと馬鹿にするつもりは毛頭ありません。今は台湾にいるとはいえ、生まれも育ちも両親も祖父母も日本人です。私自身、海外生活をすることで日本人としてのアイデンティティに目覚め、日本人として誇りを持っています。だからこそ、現実に目を向け、第2波が来た時のためにしっかり備えてほしいのです。そのために、台湾の現状を紹介しますので、ぜひ、お読みくださいませ。

パンデミックだ、ロックダウンだ、世界中が混乱に陥る中、
コロナウィルスを蔓延させなかった国、それが台湾!

米国の専門家の発言によると「85万人の台湾人が中国に住み、年間271万人の中国人が台湾を訪れる。コロナが流行しだした時は中華圏の春節で、中国からの観光客や帰省者が台湾に押し寄せる時期と重なっていた。リスクの高さでは世界有数で、政府が適切な対策を取らなければ5000人が感染していただろう」と。

それにもかかわらず、「台湾はコロナ感染者数が少ない」とか、「天才IT大臣が活躍している」などのニュースが、日本のテレビなどでも紹介されているので、ご存知の方も多いかと思うが、実際に台湾ではコロナの封じ込みに成功を収めている。4月13日以降、帰国者による感染者がわずかあるものの国内からの発症はゼロを継続中である。(6月30日現在 死者7名/感染者447人、このうち356人は海外からの帰国者)

では、なぜ台湾はリスクの高さでは世界有数だったのに、封じ込みに成功したのだろうか?主だった状況を時系列に見ることで、台湾の成功の根本的理由が明確にみえてくる。それは、思うに何と言ってもその初動が素晴らしかったから、と言える。

2019年12月31日午前中

〇台湾…中国の衛生当局に「ウィルスによる感染症について」の詳細をメールにて問い合わせをするものの、返事はない。

同日午後

〇台湾…WHOに対して「中国では何らかの感染症患者が発生しており、一部の患者は治療のために隔離されている」と報告。
〇中国…武漢市の衛生健康委員会が未知のウィルスに27人が感染していると発表。


※台湾は、なんと昨年の段階でコロナの存在にいち早く気が付き、それを中国には問い合わせをし、WHOには報告をしていた。そして大晦日の12月31日にもかかわらず、中国がその日のうちにウィルスの存在を発表したというのは、台湾のアクションによって、発表せざるを得なかった、としか思えないタイミングといえる。また、台湾はこの時点で中国がとった「隔離」という事実から、「移る」の可能性を念頭に置いて、対策に入る。

2020年1月1日

〇中国…武漢市の海鮮市場を閉鎖。
〇台湾…武漢との直行便が週12便あることを把握。その日の夜から武漢からの乗客を対象に検査を始め、発熱等の症状がある乗客は即座に隔離入院措置。


※この元旦の日、台湾のコロナ対策がスタート。

1月5日

〇中国…武漢市衛生健康委員会が肺炎により7人が死亡したと発表。

1月10日

〇WHO…「人から人への感染はない、または限定的」と発表。

1月12日

〇台湾…武漢にて独自調査。中国の状況には警戒を要すると確認。

1月20日

〇WHO…中国と西太平洋地域出身の専門家を武漢に派遣し短期間視察。
〇台湾…感染症の状況を監視する新型コロナ対策本部を設置。
※台湾はWHOよりも1週間以上も早くに現地調査をし、WHOの現地調査の日には、もう対策のための新型コロナ対策本部を設置する、という早業対応をみせた。

1月21日

〇台湾…初の国内感染者確認。

1月22

〇台湾…台湾⇔武漢間の団体旅行を停止。
※台湾国内で感染者が出たことを受けて、台湾は先ずは武漢との交流を絶ち、この頃から台湾国内では一般人たちの間でも危機意識が芽生え始めたように思う。

1月23

〇中国…武漢市封鎖、中国国内の感染者571人、死亡者17人。
〇台湾…武漢からの旅行者の入境を禁止。武漢との直行便運航停止。医療用マスクの輸出を禁止。
※中国が海外のマスクを買い始めていることを察知し、台湾内のマスク確保のために輸出を禁止する上に、この後、マスクの高値販売禁止やマスクの実名制購入など、様々な対策を早々に打ち出すことで、台湾ではマスクが手に入らない、という事にはならなかった。

1月24日(旧暦の大晦日、この日から中華圏は一斉に休暇に入る)

〇台湾…中国大陸全土への団体旅行を全面中止。
〇日本…安部首相が、中国人に向けたホームページに中国語で「春節の休暇中にはぜひ日本に観光にいらして下さい」とウエルカムメッセージ。
※春節の華人一斉移動を前に、台湾は中国への団体旅行を禁止したのに対して、日本政府は「中国人ウエルカム」という日本政府の姿勢に???となる。筆者自身もこの春節休暇中にマレーシアとタイを旅行予定だったが、どちらも中国人観光客が多いことから、急遽取り止めることにした。

1月28日

〇日本:武漢への渡航歴のないバス運転手が国内初感染。
〇WHO:テドロス氏率いるWHO代表団が北京を訪問。国際的な専門家チームを中国に派遣することで合意。
※日本は台湾よりも1週間遅れでの初感染。しかし感染者が出たにも関わらず、政府は何ら対策をとらず・・・

2月2日

〇台湾:小中高校で11日に予定された冬休み明けの授業開始を2週間遅らせると発表した。政府は「学校の防疫体制を整えるのに必要な期間」と説明し、授業は25日に計画通りに始まった。その分、夏休みを2週間短縮し、遅れた分は取り戻す。多くの学校は政府の指示で、感染者が出た時に備え、オンライン授業の準備も同時に進めた。なお、翌日には全国の大学も同様の措置を取ることを決定。
※日本は突然の休校を発表し、多くの混乱が生じたが、台湾では春節休みを延長し、その間に対策を取ったことで、児童学生には大きな影響が出なかった。筆者が教壇に立つ大学でも、休み明けに登校すると、出入り口を制限して検温したり、要所要所にサーモグラフィーが設置されていた。

2月4日

〇日本…横浜港にダイヤモンドプリンセス号入港。
※このダイヤモンドプリンセス号は、この数日前に台湾の北部、基隆港にも停泊し、乗客は一時下船して観光した。政府は、乗客たちの行動をできる限り洗い出し、行った場所と時間をグーグルマップと連携し、公表。その場所時間に居合わせた人で、発熱等の症状がある人への注意を喚起。

2月6日

〇台湾…中国在住の中国人の入境を全面的に禁止。マスクの購入実名制開始。
〇中国、香港、マカオに14日以内に入境または滞在していた外国人の入境を禁止。
※台湾は、他国に先駆けて、早々に中国人の入境を禁止。この頃の台湾と日本の警戒感がまったく違い、温度差を感じた。

2月27

〇日本…小中高学校を対象に「3月2日から春休みまで臨時休校を行うように」と突然の要請。

3月5日

〇日本…中国・習近平主席の国賓来日延期を発表

3月11日

〇WHO…パンデミックを宣言

3月19日

〇台湾…外国人の入境を原則的に禁止

3月24日

〇世界/日本:国際オリンピック委員会と東京2020大会組織委員会は、2020年の東京オリンピックの開催を1年程度延期することを発表

コロナ騒動スタートの約2か月間を時間列で見ていくことで、台湾が日本や各国に先駆けていかに早くこのコロナの危険性を察知し、素早い行動に出たかがご理解いただけたかと思う。日本は台湾が動いていた1月2月の2か月間、何ら具体的な対策は取っていなかった。この素早い動きが功を奏したことが、何よりも台湾がコロナ封じ込めに成功した要因のひとつといえる。
では、そもそも台湾はなぜどこよりも早くにコロナ情報を得ることができたのか?そして、なぜ素早い対策を講じることができたのか? このことについてみていく。

中国の台湾攻撃に対抗

そもそも台湾は人口2400万人程度、国土面積は九州にも満たない小さな国だ。反対にご存知のように中国は巨大すぎる大国。その大国の長である習近平国家主席が打ち出した「一帯一路」政策により、周辺のアジア国はもとより、イタリアやイギリス、そしてアフリカになどにもその勢力を伸ばしている。そしてそれは、もっとも身近な香港や台湾を中国とすべく虎視眈々と狙っている。それに対抗するために香港はこの一年、荒れに荒れてきた。抗議活動を武力で抑え込もうとする中国側の乱暴ぶりとつい最近施行された「香港国家安全法」では、中国の横暴が露呈した。

それと香港と同時に、習近平中国の最大の狙いは「台湾」なのだ。いや、香港は前座で、本命は台湾と言っていいかもしれない。

「台湾統一」は、習近平主席にとっての集大成ともいえる。習近平主席が見据えているのは、来年2021年7月に予定されている中国共産党創建100周年、そしてもうひとつ、2022年秋に開催予定の第20回中国共産党大会である。

習近平主席は、共産党100周年までに一帯一路の成果と香港の完全中国化を、そして2年後の第20回中国共産党大会までに、台湾統一を果たすつもりでいる。そしてこれらを成果として、2022年の共産党大会において総書記再任を狙っているわけだ。それにより翌年3月の全国人民代表大会で、国家主席の3選というわけだ。これに先んじて、すでに2018年3月に憲法を改正し、国家主席の任期「2期10年」を撤廃し、準備は整え済みである。習近平主席の狙いは「半永久政権国家」なのだ。

さて、そこで、台湾である。現在の台湾内で「統一」か「独立」か?と民意を問うたなら、「独立」が圧倒的に多数だ。この辺りの台湾情勢は、また別の機会に話すとして、しかし、いくら民意が「独立」にあったとしても、中国の力は、脅威だ。如何せん、今の中国と対等に話したり戦ったりできるのは、世界中でアメリカくらいのもので、台湾などは太刀打ちできないのが現実である。現に中国は、台湾を追い詰めるためにいろいろな策を講じてきている。例えば、国連やWHOに加盟できないのは、ご承知の通りだ。そして、台湾と国交を結んでいる国に対しては、力とお金を振り回すことで台湾と縁を切らせるように仕向け、もともと台湾との国交を結んでいる国が少ないのに、もっと減ってきている。他には、世界中で展開しているホテルや航空会社に圧力をかけて、そのウェブサイト上の「TAIWAN」を「CHINA」の一都市のように書いていないと中国国内では閲覧できないようにする。また「made in Taiwan」と書いてある商品に対しては、中国国内の税関で止めてしまい、表記の変更を強制している。他にも中国は、アップル、ナイキ、アマゾン、シーメンスなど66の外資系企業を名指しし、これら企業が「中国台湾」ではなく「台湾」と表記していることを「法律に則って処罰する」と恫喝まがいの指摘を行った。このような中国の台湾に対する理不尽なイジメや嫌がらせは数知れず。少しづつ少しづつ台湾を追い詰めてきている。

しかし台湾としては、おとなしく指をくわえて力でねじ伏せられる日を待つわけにはいかない。中国の動きをいち早く察知し、できる対策を取っていくことが、今の台湾にできる精一杯の抵抗なのだ。そう、中国の情報を知ることが、台湾の存続に大きく影響するため、その情報収集能力は恐らく世界一と言えるだろう。85万の台湾人が中国で生活しており、中国人と結婚している台湾人は40万人もいる。しかも主言語が同じ中国語で、関係も立地も近い台湾と中国なので、情報収集における優位性はFBIやCIAにも勝っているのも当然だろう。ましてや台湾は、かなり厳しい状況にあるので、情報収集力もその分析能力も、秀逸にならざるを得ない。もちろん、中国も台湾の情報収集は徹底して行ってはいる。つまり双方がスパイ活動に力を入れているわけで、そのような事情から、今回のコロナの情報もいち早く台湾がゲットできたわけだ。

そしてまた台湾は、中国が多くのことを隠すとか真実を言わない、つまり虚偽隠蔽国家だということもイヤと言うほど知っており、日ごろから中国に痛い目にあわされている経験がある。そういうことから中国の「人から人には移らない」とか「市場のコウモリが原因」などという発表を鵜呑みにすることなく、独自の調査結果に基づいて分析し、どこの国よりも早くに対応策をとってきたわけだ。

また、台湾には、17年前の2003年、中国の南部から発生したSARSでひどい目にあったという前例がある。346人の感染者と73人の死者を出し、感染数では中国、香港に次いで世界3番目である。ちなみに、SARSがコロナほど世界中に感染拡大しなかったのは、この頃はまだ中国が開放されておらず、一般の中国人が自由に海外旅行をすることが出来なかったが故だと思っている。筆者もこの時はすでに台湾にいたので、SARSの猛威をまざまざと見せつけられた。日常生活が正常に送れず、致死率15%前後と言われ、いつ自分が病気にやられるかもしれない、という戦々恐々の中での日々、恐らく台湾の35歳くらい以上の人ならば、誰もがあの時の恐怖や物々しい体験は鮮明に脳裏に残っているはずである。

それもあって、今回のコロナが始まった時、誰もがSARSの再来とばかりに、もの凄い警戒心をもって、官も民も一体となってコトに当たってきたのだ。

つまり、蔡政権がどんなに優れた対応策をとったとしても、国民一人一人の協力なくしてはこのような成果は上がらなかったはずだ。もちろん罰則や罰金でしばる、例えば海外からの入国者は14日間隔離を義務づけ、近くのコンビニに行くだけでも高額の罰金とか、マスクの高額販売で罰金、などという力で押さえつけている部分はある。しかし、2月のうちから街中の多くのレストランなどで、来店者に対して入り口で検温をし、手の消毒をさせ、その上に万が一に感染者が出た時に備えて、来店者に電話番号を記入させ・・・このようなことは各店舗が自主的に行ったのだ。ほかにもコンビニやエレベーターの中に線を引いて社交距離を保たせたり、デパートやサービスエリア等のフードコートのテーブルの上に透明板で敷居を作ったり、という具合だ。

つまり、台湾が成功したのは、政府の素早い対策に以外に、官民一体となって、コロナ封じ込め対策を徹底したことなのだ。これはSRDSを経験したからこそ、と言えるかもしれない。

では、次に具体的な台湾のコロナ状況について。
先ずは、先に述べた時間列でみたように台湾政府は12月31日にはもう動き始めているわけだが、実は、その時は台湾総統選挙のまっ最中であった。台湾は4年に一度の直接選挙によって国のトップである総統を選出する。1月11日がその総統選の投票日だった。現職の蔡英文氏の2回目の再選をかけての選挙で、前評判では優位に立ってはいたものの、2年前の地方選挙では蔡英文氏の民進党は大敗したこともあり、決して油断は許されない状況にあった。つまり選挙のまっ最中、という蔡政権存続がかかった一大事の時であったのだ。しかもこの段階ではこのウィルスが世界中に大被害をもたらすようになるとは、世界中が分かっていなかったにもかかわらず、蔡英文政権はしっかりと動き始めていた。これは、まさに蔡英文総統率いる政府が、何よりも先ずは国民を優先して動いている証しだと言える。この国民の安全を最優先させる姿勢が、台湾を守ったに他ならない。そして、どこの国よりも早い1月20日に開設された「新型コロナ対策本部(正式名称は厳重特殊伝染性肺炎中央流行疫情指揮中心)」には、その道の専門家つまり感染症や疫病、公衆衛生のプロ、医療ビックデーターの分析家などを集めた。

台湾の閣僚は医者出身が多い

そもそも台湾の閣僚は、医者出身が多いのだ。副総統の陳建仁は、米ジョンズ・ホプキンス大学で公共衛生・流行病で博士号をとり、SARSの時は行政院衛生署署長だった。コロナ対策本部で陣頭指揮にあたっている陳時中・衛生福利部長(衛生福利部は日本の厚労省に、部長は大臣。つまりは厚生大臣)は、台湾歯科医師会の会長を務めた歯科医だ。陳氏は毎日14時から記者会見し、記者の質問に丁寧に答える姿が国民の人気を集め、その対応に91%の国民が「満足」と答えたほどだ。余談ながら、次期総統選への出馬が取りざたされる台北市長の柯文哲氏(無党派)も、台湾大学病院の外科医出身である。

このように台湾の政治家に医者出身者が多いということが、感染症の流行時には、かなりの優位性を発揮できることの証明でもある。

この対策本部は、上述の通り一貫して早め早めの対応を施してきたわけだが、特に海外からウィルスが持ち込まれないようにと空港での水際検疫を強化、そして海外からの入境に対しての厳格さは徹底していた。

中国との行き来を早々に断ち、3月19日からは、原則外国人の入国を禁止した。(居留証などの滞在許可所有者を除く)海外からの帰国者に対しては、空港から自宅までの交通機関も指定され、その後は14日間を隔離期間とし、自宅から一歩も外に出ることは許されない。毎日何回も不定期に機関から在宅を確認する電話が入る上に、携帯電話を管理され、家から出るとバレるシステムを導入。これを破れば高額な罰金(最高100万元/約360万円)である。

また、マスクに関してもサージカルマスクを防疫物資とみなし、国外への輸出を禁止しつつ、国内での製造体制を整えていった。同時にマスクの高額転売者には高額罰金を課すことで、価格のつり上げを防止。そして、マスクの販売場所を指定し、また購入も実名性にすることで、買い占めもできないようにした。

このマスク対応で日本でも話題になったのが、39歳の若き唐鳳(オードリー・タン)IT大臣(デジタル担当閣僚)だ。蔡政権誕生直後の2016年10月から台湾行政サービスのデジタル化の責任者を務めてきた。唐大臣は「天才プログラマー」と言われ、中学校中退のトランジェンダーだ。彼女によって開発されたマスクアプリのおかげで、どこの薬局に何枚マスクがあるか、などがすぐわかり、台湾国民は大変重宝した。

ところで、マスクは最初の頃は週に2枚のみで指定の薬局に並んで購入しなければならなかったが、マスク製造体制が徐々に整えられていくにつれ、購入可能枚数が増え、購入場所もコンビニでもokになるなど、進化し続けている。

以上のように台湾では徹底した対策を早々に取ることで、ロックダウンや外出禁止などの強硬策をとることもなく、見事コロナ封じ込めに成功した。7月1日現在、台湾では公共の乗り物でマスク必須ではあるものの、それ以外はほぼ普通に日常生活を送ることができている。各店が自主的に来店者の検温し、フードコートのテーブル上の透明板の仕切りはまだそのままだが、レストランは賑わい、観光地は海外旅行ができなくてうずうずしている台湾人でいっぱいである。

アフターコロナは、台湾がシリコンバレーとアジアの金融中心になる

さて、今回のコロナ封じ込めの成果のおかげで台湾の世界的な地位がかなり上がった。特に米国の台湾に対する応対だ。コロナが始まる前から米中関係はおかしくなっていた。習近平主席VSトランプ大統領だ。中国が国際間のお約束を反故にすることに対して、米国が我慢ならないとして、対抗策を打ち出している最中でのコロナ騒動だ。

コロナで中国側の生産が止まったがために世界中で多くの分野において品不足が生じた。ネジ一本が足らなくても製品は作れない。その上に、中国はマスク等の輸出を政策としてストップさせ、マスクを外交の取引材料に使ったりもした。これにより、安定的なモノの供給者として中国は信用ならない、という烙印がおされた。米国をはじめ多くの国、そして一帯一路のお仲間国さえも、中国離れの気配を見せ始めた。「脱・中国」だ。では、どこへ?台湾だ!

その先陣として、アップルがその生産拠点を中国から台湾に移すと発表したのである。そうなると当然ながらアップル関連企業も付随してくるだろう。他にも多くのIT関連サプライヤーが、台湾に投資する動きが出てきている。

また、中国の香港に対する「国家安全法」だ。昨年から香港市民の中国政府に対する激しい抗議活動が起きていて、コロナで一時休戦していたところに「国家安全法」だ。これで多くの香港の富裕層とインテリ層は、香港に見切りをつけ、香港を出ざるを得ない。蔡政権は、彼らの受け入れには積極策をとっていることもあって、その多くが台湾にやってくるであろう。

そもそも香港は「アジアの金融都市」としてその役を担ってきた。それが今、中国共産党によって、金融都市が潰されようとしている。

富裕層とインテリ層が香港を離れ、また金融都市でもなくなる香港。香港のアジアでの金融都市としての地位に代われるのは、まさに台湾しかないだろう。アジアの中で教育水準や経済力、インフラ、国力などから見て、香港に代われるのは、日本、台湾、韓国、シンガポールくらいか。しかしシンガポールはすでに金融都市であるし、国土や人口の規模からみて、香港の分を受け入れるキャパはないであろう。また、日本は、規制が厳しい上にIT方面でのインフラが案外遅れている。韓国は経済不安が大きい。やはり台湾しかないのだ。その上、香港の富裕層とインテリ層が台湾に来るということは、お金と頭脳も一緒にやってくる。香港に代わってアジアの金融都市となりうる土壌は揃っている。

また、前述のように、多くのサプライヤーも台湾にやってくる。お金と頭脳に生産地としてモノまで台湾に集まるとなると、台湾はどうなるのか想像してみて欲しい。中国の生産拠点として役目と香港の金融都市としての役目の両方を兼ね備えた台湾版シリコンバレーだ。

そもそも台湾国民の教育レベルは高く、特に留学経験者が多いので英語や日本語が話せる人が多い。国民の民度も高く、治安もいい。交通網も発達している。基本的な条件は揃っているのだ。

もちろん生産地として、安くて簡単なモノは、ベトナムやインドネシアなどの低賃金な地域が担うにしても、半導体や電子部品など、高度だったり高単価な商品は台湾が生産拠点になるはずだ。もちろん台湾の人件費それなりに高いが、国の政策でタイやインドネシア、フィリピンなどから労働者を受け入れているので、賃金面でもそんなに分は悪くない。 今、世界中がこのようなことになっていることで、中国依存や一極集中の危うさは、明白になった。投資や資産分散を考えている人には、「台湾」おすすめだ。

拝拝の国、台湾

台湾は国連にもWHOにも入れてもらえない、中国にもっとも意地悪されている小国なのに、なぜ、こんなにもタフなのだろうか?ここからは精神面にフォーカスしてみていく。

私が思うにそれは台湾が「祈りの国」だから、だと思う。祈りのことを中国語で「拝拝」と書いて「パイパイ」と読む。拝拝は、台湾人の生活に密接に繋がっていて、拝拝はかかせない。

台湾の主な宗教は道教になるが、実は、道教と仏教が入り混じっていて、道教廟に観音様が、仏教寺に媽祖様がいらっしゃる、なんていうのは普通のことだ。実際に多くの台湾人にとって、道教と仏教の区別はほとんどなく、「観音様が仏教」由来で、「媽祖様が道教」、ということすら意識していない。日本には神仏習合という言葉があるが、まさしく道仏習合か道仏混淆である。しかし、台湾人を見ていると、なに教という感覚はなく、なに様を拝みながら、絶えず信仰心をもって生活を送っているなぁ、と感じる。台湾の街を歩いたことのある人なら気が付くと思うが、街中のどこにでも廟がある。豪華絢爛ですごく立派で参拝者がいっぱいなものから、路地裏の小さなものまで。ちょうど日本では、全国から参拝者が集まる有名神宮や神社があるかと思えば、地元の小さな神社、そして、もっと小さな鳥居とお賽銭箱しか見当たらないような鄙びた神社が存在するのと同じ、と考えていただければいい。ひとつの道教廟にたくさんの神様が奉られていて、祭壇の中は神様だらけだ。これも日本では、万の(よろずの)神様、などという言い方をするが、道教もそうだ。とにかく神様が多い。私がよく参拝に行く道教の総本山・指南宮では、道教以外に仏教、儒教が共存していて総勢100以上の神様が奉られている。

その上、輪廻転生の考えやあの世の存在を信じているために、先祖に対する供養心もかなり強い。お金持ちや経営者は、お墓の風水(隠宅)には、かなりこだわりながら、立派なお墓を建てる。また、鬼月といって旧暦の7月は、あの世の門が開き、あの世の霊たちがこの世にやってくる。その中にはタチのよくない霊もまじっていて、悪さをするという。そのために毎年この鬼月の一か月間は、悪さをされないように、新規開業や開店、引っ越し、結婚式などは、やらない。高価な物、例えば不動産や車なども買わない。といった具合に、多くの経済活動が停滞する。そして街中のあちこちでこれら霊のためにお供え物を盛大に並べた拝拝が執り行われている。拝拝と言えば、旧暦の毎月1日と15日、会社やお店では2日と16日は、拝拝の日と決まっていて、これも台湾人にとっては、大切な日だ。路面店などでは、お店の前にお供え物(鶏や魚の丸焼きや果物、お菓子など)を並べ、スタッフたちが金紙(あの世で使う紙のお金)をせっせと燃やしている姿を見ることができる。これは、ローカル店だけではなく、シャネルやルイヴィトンなどの有名ブランド店の店さきでも行われているのだ。

つまり台湾人にとって、祈ること、そして、神々や亡くなった先祖と対話することは、生活習慣になっていて、幼少期から当たり前のこととして受け入れている。大の大人が神様に向かって跪きながら真剣に祈っている姿や、小さな子供が大人と一緒に廟にやってきて、手を合わせている姿を見れば、この国は神様に守られている、ということも納得してもらえると思う。 台湾はIT先進国として、世界でもトップクラスの技術を誇り、生活のいたるところにITやAIが行き渡っている。今回のコロナ騒動でそのことを証明できたにもかかわらず、神様やあの世の存在を尊重する不思議な国なのだ。

神様の声を聴く方法

最後に、台湾人が神様やあの世の存在と対話する方法を紹介したいと思う。

台湾の廟では、祭壇の前で紅いライターほどの大きさの三日月型の木片を何回も投げている人が必ずと言っていいほどいる。これは、神様の声を聴いているのだ。紅い木片は「ポエ」という。このポエ2個を両手に持って、神様にイエス・ノーで答えられるような質問をする。例えば「自分で起業しようと思いますが、よろしいでしょうか?」という感じだ。そして、このポエを地面に投げる。ポエには裏表があり、2個のポエが「裏/表」と出れば、イエスとかOKの意味だ。これは、裏と表が出るということは「陰陽」を表し、バランスが取れている、という意味からイエスなのだ。台湾人はおみくじを引く時にもポエでこのおみくじでいいかを確認している。

また、お墓参りの際にも、ご先祖様といろいろなことを共有するためにお墓の前で食事をしたりしてある程度の時間を過ごす習慣がある。そして引き上げる際にもポエを使って「あの世のおじい様、もうおいとましてもよろしいでしょうか?」と、たずねるのだ。「裏/表」が出なければ、もう少しそこで時間を費やす。

と、こんな感じでポエを使って、神様やあの世のご先祖様の意向を聞くことができる。ただし、これは遊びではないので、信仰心のない人が適当な気持ちでやったり、自分に納得がいく結果が出るまで何回もやったりしてはいけない、とされている。日本の皆さんは、ポエを手に入れづらいと思うので、コインを代用すればいいと思う。裏表が明確にわかるものであれば、なんでもかまわない。ちゃんとした信仰心を持って行えば、あなたが悩んだ時には、神様なりご先祖様が正しい道を教えてくださることだろう。

今は、コロナの影響でお互いの国を自由に行き来することはできない。多くの台湾人が、日本に遊びに行けないことをとても嘆いている。一日も早く日本の状況がよくなり、世界でもっとも親日家・台湾人が、また「日本」を楽しめる日が来ることを願ってやまない。と同時に、一人でも多くの日本人に祈りの国・台湾に足を運び、台湾の現状を体感し、そしてエネルギッシュなのに穏やかな台湾パワーに触れていただければ嬉しいことこの上ない。 その日まで、再見~