日本の皆さんは「易」という言葉は、聞いたことがあるかと思います。
「易者」の「易」と言えば、あぁ、なるほど~、となりますよね。
この「易」とは、正式には「易経」(日/えききょう・中/イージン)といい、元々は三〇〇〇年以上も前にできた古代中国の哲学であり、宇宙観の集大成と言われています。易経は占いである面と東洋思想の書物としての二面性があります。
中国や日本はもとより、「易経」は今では、世界中で愛されています。
日本では、伊藤博文が易を頼りに日本の方向性を決めていたことは、有名な話ですし、日本で最も有名な化粧品会社「S堂」は、社名を易経から命名したそうです。
台湾では、元台湾総統・李登輝氏も易経を勉強なさっている、と私自身がご本人の口から聞きました。
また、精神法則で世界的に名をとどろかせたアメリカの哲学者、「マフィーの法則」のジョセフ・マフィーや、スイスの心理学者、カール・ユングも「易経」の愛好家であり、彼らの尽力によって、西洋にも広まったのです。
では、「易経」とは、いったいどんなものなのでしょうか?詳しくは後に述べさせていただくとして、ここでは簡単にお話しいたします。
「易経」は、―との- -2種類の符号を、それぞれ陽と陰とし、たったこの2つで宇宙万物のすべてを解き明かしています。(これを太極といいます)
そして、この―と – – の符号を3本重ねたものを、一つのカタマリとし、それぞれに名前を与えました。例えば―の陽の符号が3本重ねると、≡こうなります。これに乾という名前をつけました。同じように陰である—を3本重ねると、 ≡ ≡ となり、これを坤と名づけました。
このように―と—の3本セットは、全部で8種類出来上がり、これが「易経」を構成する基本的な要素となります。
この8種類の符号は、それぞれ「天」「地」「火」「水」「風」「雷」「沢」「山」を表し、「易経」では、この世の森羅万象を含むすべての出来事は、この8つの基本的要素で説明がつくのです。
なお、この8種類の要素を「八卦」と呼びます。「当たるも八卦 当たらぬも八卦」の八卦です(笑)
そしてこの八卦を上下に2つ重ねることで、6本セットを作ります。すると8✕8=64通りの組み合わせ、つまり六十四卦が出来上がります。
つまり「易経」はこの―と—を6本ずつ並べた、六十四卦で構成されています。
「易経」占いにおいては、まず、この六十四卦を出すことから始めます。
この六十四卦を出す方法は、日本では主に「筮竹」や「八面体サイコロ」「コイン」を用い、台湾では「米粒」か「古銭」を使う人が多いようです。何を使うにしても原理は同じですが、「知りたいこと」に対して、どの六十四卦が出るのか、そしてその出た卦を読み解く作業が、「占い」ということになります。
また、「易経」は、たんに占いというだけではなく、東洋思想の書物でもある、と先に書きました。森羅万象を含む宇宙観をもった哲学であり、儒教の教えそのものでもあるので倫理や道徳をも説きます。また、その範囲は政治、経済、教育、医学にも及び、昔から帝王学ともいわれました。賢明な先人達は、この人間に必要とされるあらゆる知恵をもつ「易経」に注目し、生活の指針に利用するだけではなく、広く政治や人事にも大いに役立ててきました。